悪夢のコーチ・グラストンベリー出発編

(注: この記事は2013年6月に旧ブログから移植した記事です)

昨日、グラストンベリー・フェスティバル(Glastonbury Festival)から帰ってきて、その日の夜は日本から参戦したY氏を家に招いて打ち上げ、そしてかなり飲みまくり、寝た時の記憶がなく、今日いつものようにワーク・エクスペリエンス先の会社へ目が覚めぬまま出勤。

ボスから「顔が疲れてるよ」と笑顔で言われてしまった。。

で、忘れないうちにグラストンベリー回顧録。

まずは悪夢の出発編。

今回ゲットしたチケットは、コーチ(長距離バス)のチケットがセットになっているやつ。
このチケットの場合、必ずコーチに乗って会場へ行かなければならず、フェスのチケットは行きのコーチの中で手渡される。

出発予定時刻は6/20(水)の15:30

万が一その時刻に遅れてしまった場合、フェスへ行けなくなってしまう。

というわけで、出発予定時刻の1時間前に出発地である、Earls Court Coach Parkへ到着。
Earls Court」なので、チューブの駅はEarl’s Courtかと思いきや、駅の出口で駅員に聞いたら、隣の駅のWest Bromptonが最寄り駅だった。。

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駅を出ると、周りにはそれらしき人がいっぱいいる。
そして、それはコーチ出発地へ近づけば近づく程増えていく。
皆、テントや椅子、寝袋など、キャンプグッズを抱え、自分のコーチの出発時刻がくるまで待機している。
グラスト出発編1

知らない人が見たら、ものすごく変な集団に見えるだろう。
もしくは、避難民。

とりあえず、出発まで時間があるので後ろで待つように言われる。
この日は幸い晴れで暑いくらい。

言われた通り列に並び、しばらくぼーっと人間観察をしながら待つ。
一番見てて驚いたのは、かなりの人が、ビール1ダース(24缶)を店で買って、それをそのまま持参していたこと。
それも一人1ダース。女子も。

フジでは持ち込み禁止なので、リュックに隠してこっそり持って行っていたのに、こちらでは堂々と、しかも量がハンパでない。
リュックの上にガムテープでぐるぐる巻きにして持ってきている強者もいた。
しかも、この時点で飲んでいる人多数。気早すぎ。

コーチが到着すると、コーチの番号がアナウンスされ、該当者はそのバスに乗り込み、出発。
列関係ないじゃん。並んでる意味ないじゃん。。

そして。

15時半のバスの一部が全然来ない。

そして、その来ないバスの中に、自分達が乗る予定のバスも含まれている。
不安が募る。
しかも、自分達のチケットは、海外在住者向けに販売されたもので、手元にコーチチケットもないし、あるのはそのリファレンス番号が書かれたメールをプリントアウトしたものだけ。
大丈夫か・・

16時になっても、まだ来ない。

しばらくすると、15時半出発予定の人が集められ、係りの人が「15時半出発予定のバスがかなり遅れていますので、こちらで待機しててください。」と告げる。
出たよ、これだ。怒るというより、やれやれな感じだ。
周りも特に怒っているというより、じゃあビールでも飲んでゆっくり待つかという感じ。
恐らく、この日は2日前の水曜日で、かつ天気も良かったので、皆の気持ちにもゆとりがあったのだろう。

皆、フェス用の折り畳み椅子を広げ、飲み食いし始める。
フェス会場のそれとなんら変わりない風景。
フェスはもう始まっている。
まだ出発さえもしていないのに。
グラスト出発編2

遅れてきたバスが到着する度に、そのバスの番号がアナウンスされ、それに該当する人が歓声を上げ、意気揚々とバスに乗り込む。
残された人々を尻目にその間をバスが通り抜け、バスの中の人は手を振っている。
思わずアメリカ横断ウルトラクイズの勝ち抜けシーンを思い出してしまった。

途中、係りの人にクレームをつけている人がいたのだが、よく聞いているとどうやら乗り過ごした模様。
乗過ごした人:「15時出発予定のNo.○○○のバスってまだ来ないの?
係りの人:「え、もう行ったよ?
乗過ごした人:「はぁ?俺ここでずっと並んでいたのに!なんで言ってくれなかったんだよ!!
係りの人:「え、ちゃんとアナウンスしたよ。
乗過ごした人:「そんなの聞こえなかったよ!
係りの人:「でも、もう行ってもうたし。。
とか何とか言う押し問答が15分くらい続いた。そりゃもう必死である。

ここまで来ておいて、さらにその場にいたのにも関わらず乗り過ごしてしまったこの人の気持ちを察すると、胸が痛くて仕方がない。
結局この人は一旦引き下がったかと思いきや、色んな人に交渉して周り、最終的にはバスに乗り込むことが出来た模様。
ただし、フェスのチケットは指定されたコーチに乗っていないともらえないので、その人が無事フェスに入れたかどうかは分からない。。

肝心の自分達のバスが来たのは18時半
荷物をバスへ放り込み、やっとのことで乗り込む。
ちゃんとバスへ乗れるかどうか心配していたが、プリントアウトした紙を見せたら、あっさり乗せてくれた。

結局バスが出発したのは19時
実に3時間半の遅れである。
予定ではほとんど会場へ到着しててもおかしくない時間である。
暗闇の中、テントを張ることになるのかと不安がよぎる。

そんなことはおかまいなしに、皆出発できたということだけで、かなり盛り上がり、バスが動き出した時は歓声が上がった。

しかし、この歓声が、この後何回も起きることになるとは、この時知る由もなかった。

途中サービスエリアへ寄り、そこで30分の休憩。

ここでやっとグラストンベリー・フェスティバルのチケットが手渡される。
チケットの受け取りにはIDが必要と書いてあったので、国際免許証の他に学生証、パスポートのコピーを持参し、万全の体制で列に並ぶ。
すると、チケットを配布していたバスの運転手が突然、そのチケットの束を乗客である1組のカップルに手渡し、去っていった。。

なんだ?と思いつつも、なぜか列が進んでいく。

なんで?

見る見るうちに自分達の番になり、そこで気付く。

なんと、客がチケットを配布していた

配布係(注:客です):「えーっと、名前は?
自分達:「○○です。
配布係(注:客です):(パラパラとチケットをめくり)「あー、これかな?
自分達:「あ、それそれ
配布係(注:客です):「はい、じゃこれねー

ID不要のまま、無事チケットをゲット。
グラスト出発編3

しかし、なんつー適当な。。

よく見ると、バスの運転手は他のバスの運転手と向こうの方でしゃべっている。
その配布係に任命されたカップルも「信じらんねー」とかいいつつも、任務を全うしていた。

緩すぎるよ、イギリス。。

無事チケット配布が終わり、バスが出発。
と、思いきや、意味不明の停車。
どうやら何台か一緒に走っているらしく、他のバスを待っていたらしい。

しばらくして、今度こそ本当に出発。
この日、2度目の歓声が上がる。時刻21時15分

しばらく走っていると、渋滞に巻き込まれる。
ここで乗客の一人が運転手に何か話しかけている。
どうやら、おしっこをしたいので止めてくれ、と言っている模様。
どうせ待っている間にビール飲みすぎたんだろう。
そんなんでバス停めれないだろとか思っていると、あっさり停車。

停めるんかい!

バスの横で立ちションして意気揚々と戻ってきた。
申し訳ないという気持ちは全くないようだ。

そして、これがこの後大きく影響を及ぼす。

しばらく走っていると、何か高原の向こうに明かりが見えてきた。

ん?着いたか??と思っていたら、なんとそれはストーン・ヘンジだった。
以前にもペイントンからロンドンに向かうコーチの中から見たことはあったが、またコーチの中から見ることになるとは。

この辺りで、周りに車がいないことに気付く。
そして、前を走っていたバスも見えない。

その後、バスの動きが怪しくなる。

そして、丸いラウンドアバウトという交差点で、なんと、運転手が後ろにいた客に向かって、「これ、こっちでいいと思う?」と聞いているではないか。

その聞かれた客も「いや、そんなん聞かれても・・」てな感じ。そらそうだ。

そう、この運転手、道を知らないのである。

やけに神経質に他のバスと行動を共にすると思っていたら、ただ単に道を知らなかっただけなのである。
しかたなく、その近くで工事していた人に、「この道、ちょっと前にコーチ通らなかった?」と聞く。「知らん」との回答。

いや質問がまずい。

見かねた客が、「グラストンベリーってどっちに行ったらいいの?」と聞く。

その聞き方が正しい。

こっちじゃなくて、多分あっちだと思うよ。」との回答。

というわけで、Uターンをするはめに。

しかも、道路の真ん中で渋滞を引き起こしつつ、何回もハンドルを切りなおし、Uターン。
この日、3度目の歓声。時刻22時25分
しかし、道は細く、真っ暗。

やけに運転速度が遅い。特に分岐点が出てくると、止まりそうなくらいのスピードになる。なんつぅ自信なさげな運転だ。
絶対迷ってるよこいつ。。

見かねた客が「誰か道知ってる人いなーい?」と後ろに向かって、叫ぶ。
ガヤガヤとあっちこっちで騒ぎ始める。
何人かが前にやってきて、その客と相談を始める。

この見かねた客、何を隠そう、チケット配布係に任命された客で、一番前の席に座っているので、最後は引率の先生みたいな感じになっていた。
自分達はその引率の先生のすぐ後ろに座っていたので、この時の状況がよく分かり、後ろの人に比べ、何が起こってるんだ?的なストレスはあまりなかったと思う。(というか、逆におもろかった)

しばらくすると、運転手がおもむろに地図を取り出し、その引率の先生に渡す。
おまえ、地図持ってたんかい!&自分で地図見ないんかい!と2重の突っ込みを入れたくなったが、ここは先生に全てを託すしかない。
しかし、地図がおおざっぱで細かい道まで載っておらず、よく分からない。

ここで救世主登場。

ヒゲを生やしたぽっちゃりした男が前にやってきて、携帯のインターネットを使い、地図を検索し、引率の先生と何やら相談。

ここに先生&救世主の最強タッグ結成。

そして結局、彼らが最後までナビを務めることになった。

分岐点や看板が来るたびに、恐ろしくスローダウンするバス。
明らかにナビの指示を仰いでいるのが丸分かりである。

おもろすぎる。。

そして、23時30分

グラストンベリー、右」の看板をついに発見。
この日、実に4度目の歓声、というか大喝采である。

しばらく走ると、分岐点が出てきて、当然右に曲がるのかと思いきや、まっすぐ行こうとする運転手。

皆揃って、「みぎぃーーー!!!」と叫ぶ。

慌てて右に曲がる運転手。君は本当に運転手なのか?

23時50分、やっとグラストンベリーのライトアップされた会場が見えてくる。

皆前のめり気味。当然自分も前のめり。
そして、ちょうど0時をまわった時にようやくコーチの駐車場へ到着。
この日最後の歓声。

運転手ようやった!ところで、これから一人でちゃんと家に帰れるんか!?」と突っ込まれ、皆大爆笑。
いやはや、まさにその通り。

とにかく、家を出てから、約10時間、ようやく会場へ到着。

入り口でチケットを渡し(結局ほとんど写真とかチェックしてなかったような・・)、リストバンドをはめてもらう。
そして、洪水を避けるために、事前にY氏に教えてもらった高台の場所へ移動。
これがまたしんどかった。

何かの魔法にかかったように荷物がどんどん重くなってくるのだ。この魔法の正体はグラストの屈強な雑草だった。この雑草たちが荷物を運ぶガラガラの車輪に絡み付き、文字通り足を引っ張っていたのだ。
この時、次回は絶対デカい車輪のガラガラを買おうと心に誓った。
(ちなみに、この車輪に絡みついた雑草を取り除くのに、アーミーナイフが役に立った)

結局、テントを設置し、ふぅと落ち着いたのが夜中の2時。

予想よりもライトが各場所に設置されているため、多少明るかったが、暗闇の中ランプをつけてのテント設置はなかなか大変だった。
予定ではこの日、夜7時か8時頃について、テント設置して、少し会場を散歩しようと思っていたのだが、結局ビールを1杯飲んで(うまかった。。)、寝袋に入り就寝。

まだフェス本番も始まっていないのに、このネタ満載の長い一日。疲れた。

しかし、高台から見下ろすグラストンベリーの会場の夜景とビールがその疲れを癒してくれた。

1年以上も前からこのグラストンベリー・フェスティバルを目標に(チケットが取れるかどうかも分からないのに)全ての留学日程を組んできた者としては、「ついに来れた・・・」といつになく感慨深い一瞬となった。
グラスト出発編4

Listening to “These Streets” by Paolo Nutini
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