トム・ヨークがSpotifyから撤退した件についての考察

本日は、音楽ネタということで、こちらで出張版本日のMetro。

Thom Yorke pulls music from Spotify: New artists will not get paid
(ペーパーのタイトルは「Yorke in royalties row with Spotify」)

レディオヘッドトム・ヨークThom Yorke)が、彼のサイド・プロジェクトであるアトムス・フォー・ピースAtoms For Peace)ならびに彼のソロ・アルバム「The Eraser」をSpotifyのライブラリから削除した模様。
理由としては、Spotifyがアーティストに対して、正当なリターンを支払っておらず、その儲けをSpotifyが吸い取っていて、それへの抗議ということらしい。

ただ、今チェックしてみたところ、レディオヘッド自体の楽曲はまだ残っており、Spotify上で問題なく聴けるようだ。

恐らく、これは、Spotify側に改善の機会を与えているのかもしれない。
(つまり、レディオヘッドの楽曲が交渉材料)

記事によると、Spotify以外で、アーティストに支払われる金額はだいたい以下のようになっている模様。
(Webの記事にはないが、ペーパーの方で紹介されていた。)

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  • FMラジオ£15-£20(1曲ラジオでかかる度にアーティストに支払われる金額)
  • CD67p-£2(£10のCDを購入した場合に、アーティストに支払われる金額(6%-20%))
  • iTunes8p(79pで1曲ダウンロードした場合にアーティストに支払われる金額)
  • Spotify0.4p(Spotifyで1曲ストリーミング再生した場合にアーティストに支払われる金額)

こうして比較してみると、FMラジオの金額が高く、Spotifyがかなり低く見えるのだが、そもそも母数が違うので、なんとも言えない。
例えば、Spotify上で100回その楽曲が再生されたら、合計£40になる。
これはラジオで1回かけられた場合に支払われる額の2倍以上である。

で、Spotifyはインターネット上で、それこそ全世界とまではいかないけど(日本もまだだし)、かなりのユーザ数を誇るので、レディオヘッド級になると、それなりの金額にはなるはず。
では、トム・ヨークが問題だと言っている新人アーティストについてはどうか。

確かに知名度がなければ、そのアーティストの存在すら知らないだろうし、そもそも皆再生することもないだろうし、1曲0.4pであれば、そこから得られる収益はほんとに微々たるものだろう。
ただ、最近のSpotifyは、アプリをオープンしたら、画面に、このアーティストを聴いている人はこのアーティストもオススメです的なリコメンド画面が表示される。
それで、その情報が、自分が最近Spotify上で聴いたアーティストとテイストが同じアーティストを紹介されるので、このインタフェースになってから、じゃあ聴いてみるかと試すことが多くなった。

これらは、基本的に自分の知らないアーティスト達で、お、これいいなとか、新たな発見が結構あったりするし、個人的に、最近よく使っている。

トム・ヨークのこの抗議に対して、Spotify側も、「自分たちは音楽業界に貢献するため、アーティストとそのファンの橋渡しをするため、新たな才能を発掘するために、かなりの投資をしている」と反論している。

Spotify responds to Thom Yorke comments: We’re investing in new music

個人的にはこれはウソでないと思うし、上で書いたように、現に自分もSpotifyのリコメンド機能によって、知らないアーティストにリーチする機会が増えた。

これは名が知られていないアーティストにとってはプラスでしかないと思う。

なにせ、自分達が売り込まなくても、勝手にSpotifyが、自分達を好きそうなユーザに24時間営業で宣伝してくれ、おまけに曲を聞かせてくれるのである。

もし、ここでリスナーがいいと思えば、そのアーティストのギグに、チケットを買って足を運んでくれるかもしれない。
最近読んだ、津田マガvol.84の記事で、くるりの岸田氏が、「最近のバンドはこまめにライブやって、そこでTシャツを売って食っている(音楽ビジネスで一番利益率が高いのがTシャツらしい)」というような発言をしているのを目にしたが(この記事自体おもろいので興味ある方は是非)、CDが売れなくなってしまった昨今、アーティストにとっては、フェスやギグに出演する、というのが一番収益に直結していることなのかもしれない。

そしてファン的には、フェスやネットで新しいアーティストを発掘し、気に入ったら、単独ライブに足を運ぶという流れが主流になっているのではないだろうか。

なので、Spotifyがそういう機能を開発してユーザに提供するために、投資しているのは事実だと思う。

もちろん、企業であるからには利益は出さないといけないし、その利益を株主に還元するのは会社として当然のことなので、利益が出るようなレートを設定しているのは確かなはず。
(そうじゃないと会社自体つぶれてしまうので)
トム・ヨークがここまでアクションに出るというのは、それなりの(表に出ていない裏の)理由があるのかもしれない。

ただ、一音楽ファンとしては、Spotifyは素晴らしいサービスだと思うし、新しい音楽に出会うきっかけを充分に提供してくれていると思うので、双方歩み寄って、うまく折り合いをつけて欲しいなと思う。
(というか、Spotifyなしに、今の自分の音楽ライフは成り立たない!)
まぁ、個人的には、タワレコでスタッフのリコメンド情報を読みながら視聴して自分の知らないアーティストを発掘していた時も、あれはあれですごく楽しかったけど。
(3時間も4時間もやってると、さすがに耳と足疲れるが・・)

Listening to “Ok Computer” by Radiohead
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